2010年4月8日木曜日

非誠勿擾

狙った恋の落とし方。を字幕無しで中国語音声のままYouTubeで見た。こちらにも紹介されているけれど、いくら目を凝らして見ても、セリフが分からないと何が面白いのか全く分からない。私が見たYouTubeの動画では日本人が喋る日本語にも字幕が付いていなくて、中国では日本語が分からないまま放映されていたのだろうか。んな訳ないか。再来年にでもレンタルショップでDVDを借りて日本語字幕付きで見ようと思うけれど。早くあれこれ考えずに反射的に笑いたい。

「2008年は大地震もあったし金融危機もあったし、みんな暗くなっているからせめて映画で楽しんでもらいたいと思って作った、」と監督が話しているけれども、実際に有りそうで有り得ないことを物語のあちこちに散りばめて笑わせてくれる。「映画で夢を見て欲しい、」とも言っていて、確かに大人の童話と言って良い、可笑しな話と皮肉の詰まった映画だと思う。
冒頭は、紛争と武力による鎮圧をイメージさせる映像。中国人は暗い過去を引きずりながら軍事大国化にも懸念を抱いているのかなぁ~と思わせる。視聴者を戦車の下敷きにさせる映像に引き続き、登場するのがドラえもんの皮膚(?)の色をした紛争解消機。ドラえもんはジャンケンが出来ないという皮肉が分からないと面白くないのだけれど、戦争は始まる前に既に保有する戦力で勝負が決まっていて、それ以前に日本はジャンケンが出来ないんだよ、とか。これから始まる(男女の)戦争を暗示させる小道具にもなっていて、ともかくのっけからパロディーである。
中国人は、日本人に比べて(比べなくても)、言葉の背後にある故事を重視する。駄洒落を捻じ込みながら内容の細部まで念入りに意味を含ませていて、中国人の知り得る情報が無い日本人にはちょっと残念だけれど、意味が分かれば分かる程笑える映画だと思う。

まずは主人公のお見合いサイトへの投稿から。⇒こちらこちらに全文掲載。後に「海亀(留学帰国組)」が「海航」の客室乗務員(スッチー:スー・チー)に惚れるという設定で、初めに中国に多過ぎる同性愛者とのお見合いから。中国ではゲイの仲間が同志と呼ばれるらしく、中国人に「同志社大学」と言うと、ゲイが集まる大学を連想させるらしい。 

我见过(建国)啊。「私会ったことありますよ。」
爱茉莉(艾茉莉)-「私を愛してよ!」とか「ここのレストランが大好き」とか。
最後は「皮膚が白い」と言いながらBye!と言わせていたり。
二重瞼にする為にわざわざ韓国まで行くかと思うのだが。一体どこまで笑いの要素なのか、映像だけではシリアスにしか見えず、日本語訳を見なければ大まかな内容すら分からないのは辛い。台本の意味が分かるとギャグの連発に感動出来そうだけれど、分かってもそれ程笑えないという人民中国の記事もある。「征婚啓事」が元と言われる原題「非诚勿扰」、ここの情報によると、中国では婚活で「本気でつきあえる人を望む」という意味で書かれるそうな。検索でこれしかヒットしない様に頑張った様な邦題「狙った恋の落とし方。」、題名だけ見たら格好良い恋愛ゲームなのかと思ってしまったけれど、遊び好きな日本人の気を引くならこんなお手軽な題名が受けるとでも思ったか。実際に出て来る「真剣にお見合い中」な人々は、皆極めて深刻で格好つける余裕なんか無い様だし。だからこそ笑えるのだけれど、終始一貫して人生の一大決心の為にシリアスな表情しか見せないし。時に辛らつな内容を含んでびっくりさせられたりもして。もしかして、ビビアン・スーは中国で苛められているのか??とか。初めから「狙い」がスチュワーデスということで、海と同じ色の大砲で航空機を撃墜するイメージで、辛辣な戦争と緊迫感、ついでに人を殺す悲しみと憂いを伝たかったかも知れないけれど。何か題名だけ見せられると、人を墜として喜ぶことしか考えて無さそうな軽薄さが感じられてしまう。
英語の題名は「If you are the one」。多分、半ば過ぎに主人公がつく嘘にスポットを当てていると思われ、逆説的に「君だけ」の思いが強調されて良いと思う。酒を飲みながら「何故お前の頭には他の男がいるのか」と主人公が怒って大嘘を吐くのだが(実は自分の頭に別の人がいて)、大きな試練の後にお互いにお互いがonly oneとなってそれなりにハッピーエンド。この物語、過激で助平な大张伟ファンなら必ず楽しめると思う。てか、中国人は潜在的に超過激で助平好きじゃないかと思う。もしこの映画が中国で一番人気だとすれば、の話だけれど。そもそも主人公がヒロインと出会った直後。
「君は自分でどのくらいファックするの?」
「60分?じゃあ僕は90分君をファックしてあげる。」
どんなに助平な国でも無理っぽいことを、当たり前のようにしれっと口にしているのが痛快。この映画で中国人が平均的に助平になることを助長している気もする。

予告編でプールにボチャンの挿入箇所、かつて葛優と夫婦の仲を演じたことのある(本当か?)女優の娘、车晓がお見合い相手にキャスティングされているとかで、突拍子も無くやりたがらない女性が意表を突いて笑わせる。中国だったら未だにこういう「嫌なものは嫌」で一生通す人が多そうな気もする。⇒こちらに日本語訳。
勿論嫌な人はずっと嫌なままだけれども、やっぱり中国人、本来は助平でいやらしい。上海では、結婚式の後に友人たちが2人の新居に押し掛けて騒ぎ(闹洞房)、最後に皆で2人をベッドの中で裸にさせてから去るのが恒例とか。大勢で恥じらいも無くよくそんなこと出来るね、と日本人が思うことを中国人は普通のことと思ってやっていたりする。

ひょっとすると北海道と聞いて中国人が思い浮かべるのは、北京五輪で活躍した平泳ぎの北島康介選手かも知れない。彼は中国で「蛙王(カエル王)」と呼ばれ、同じく蛙王の羅雪娟選手と恋仲だったことで有名だ。かなり保守的な中国人からも歓迎されていた様で、中国人女性と恋愛関係になり、大陸で人気を得ている日本人は北島以外にいないと思う。恐らく「北海道」と聞いて「北島の間に海。」と思わせるのが製作者側の仕掛けで、クライマックスに海を持って来たのもその為だと思う。中国人にとって北京五輪は非常におめでたい一大イベントだったのだなぁ~、と、北京の社長に水立法(water square)へ無理やり連れて行かれたreechoは思う。中国人のスポーツ大国化への憧れは絶大である。ちなみに中国では、北京五輪開催時に最も人気を集めていたのが女子の高飛び込みで、ヒロインが高飛び込みよろしく海へ投身するのは、中国で実力及び人気No.1で当時から大富豪との恋仲を噂されていた郭晶晶選手を連想させる為だと思う。出演者の出身地がちょうど逆になっているのも面白い。

この映画が封切られた2008年は北京五輪の年。今年見るにはちょっと時代遅れな感じが拭えず。中国人にとっての喜びを最優先にした映画で、日本人には知られたくないジョークも多いかも知れない。言葉遊びの為によくここまで凝ったな、と思わせる設定、一体誰が思いついたのか、噂によればゲイな谷村新司の「昴」が流れれば車も「スバル」とか。
北海道での大盛況に倣って中国の撮影チームを誘致した静岡県。衛星放送のドラマなんてどれ程の人が見るのか知らないけれど。中国人にとって特別な物語(故事)の無い静岡は、北海道のように人気にはならないと思うけどね。後で落胆しないように、のっけから期待しないように悲観しておこうかと思った。

こちらの情報によると、北海道で2人を案内する邬桑(そのまま「うーさん」:主人公とは「同志」の仲だった)役を演じる邬逸聪さん(現在は日本国籍取得し宇崎逸聡さんになっている)、実は日本に会社を持つ映画監督で、今回の北海道での撮影に大きく貢献したそうだ。日本から観光大使に任命されていて、どうやら初めから日本で撮ることを予定していたらしい。靖国神社参拝問題についても触れられていて、映画でもやくざの葬儀なんかに参列する場面があり。「Shark Tale」というアメリカの映画も靖国神社参拝について面白可笑しく描いているけれど、出て来る日本人も不誠実な人間ばかりで、日本人がこの映画を真面目に見ると不愉快になるんじゃないかと思った。あまり愛嬌の無い中国人と違ってやたらに笑顔で接客する日本人をゼンマイ仕掛けのおもちゃで馬鹿にしている様だし。
こちらにある様に、不誠実な人は邪魔しないでね、という意味の原題で「日本人お断り」と言っている様な気もするし。日本人と中国人を逆にして笑わせているのか、訳の分からないふざけた日本人が、真面目な中国人を引き立てている様でもあり。日本人と中国人を意図的に入れ替えて描いているとすれば、主人公の教会での長たらしい懺悔は、日本人に念入りに執拗に反省を求める中国人の思いを表現した物とも見え。胡錦涛のスローガン「和諧」を利用しながら「文明の調和」を目指し、紛争の原因になり易い信仰を描きたかっただけなのかも知れないけれど。敵に成り代わるとか真似するのを調和と見做すにも限界があると言うか。中国ではそもそも男女間のジャンケン(戦争)を放棄するドラえもんが愛されている様で、男女間の激しい戦争(殺すのが目的だから先ず墓地購入?)を免れて結局同性愛に走る人も多いとか。意見や風俗文化の一致は、かくも難しいものなのかと思い知らされる映画でもある。土臭くて助平な婚活の話と見せ掛けながら、きっちり国内外の衝突に言及していて、中国人が一体何に笑うのか知らないけれど、私もあちこちで検索を掛けて台本を解読しながら、しばらくこの映画で楽しませてもらおうかと思う。

脚本は、途中まで当当网で見られる。
日本語訳は「中国語達人への道」がお薦め。1011

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